「来月から健康管理DXお願い」——そう言われた一人情シスのあなたへ。この記事では、中小企業でも無理なく健康管理SaaSを導入・定着させる方法を、90日ロードマップと稟議テンプレ付きで解説します。
この記事のポイント
- 一人情シスでも回る健康管理SaaS選定の3条件
- 週単位のタスク分解で進める90日ロードマップ
- 経営層を動かす稟議書の書き方とROI試算の見せ方
- 定着率を3倍にするチャットボット連携術
- 総務との分業モデルと外注判断基準
それでは早速見ていきましょう。
一人情シスが健康管理SaaS導入を任された現実
中小企業で情報システムを一人で担当している方にとって、健康管理SaaSの導入は突然やってくる「追加業務」の代表格です。わたし自身、経営管理の現場で15年働いてきましたが、情シス担当者が「本来の業務」以外でどれだけ苦労しているか、何度も目の当たりにしてきました。
「来月から健康管理DXお願い」と言われた日
ある日、経営会議で「健康経営優良法人の認定を目指す」という方針が決まりました。そしてその翌週、情シス担当者のデスクには「健康管理SaaSの選定と導入をお願いします」というメールが届いていたのです。
正直なところ、この瞬間に頭をよぎるのは「また仕事が増える」という不安ではないでしょうか。わたしも2人の子どもがいる身として、帰宅時間が遅くなることへの焦りは痛いほど分かります。
健康管理SaaSの導入は、単なるシステム選定ではありません。産業医との連携、従業員への説明、紙の健康診断結果のデータ化、ストレスチェックの運用設計など、やることは山積みです。しかも、これらは「情シスの本業」ではないケースがほとんどです。
問い合わせ急増と家族時間消失のジレンマ
健康管理SaaSを導入すると、最初の1〜2ヶ月は問い合わせが急増します。「ログインできない」「健診結果はどこから見る?」「ストレスチェックの締め切りはいつ?」など、毎日のように質問が飛んできます。
わたしが見てきた現場では、この時期に情シス担当者の残業時間が月20〜30時間増えるケースが珍しくありませんでした。家に帰っても子どもはもう寝ている。週末も「来週の問い合わせ対応マニュアル」を作っている。そんな状況が続くと、何のために健康管理SaaSを入れたのか分からなくなってしまいます。
だからこそ、最初から「一人情シスでも回る設計」を意識することが大切です。この記事では、わたしの経営管理15年の経験と、実際に見てきた導入事例をもとに、中小企業の一人情シスでも無理なく運用できる導入術をお伝えします。
中小企業が健康管理SaaS導入で失敗しない3条件
健康管理SaaSの選定で最も重要なのは、「機能の多さ」ではなく「運用が回るかどうか」です。わたしがこれまで見てきた成功事例と失敗事例を分析すると、以下の3つの条件がクリアできているかどうかで明暗が分かれていました。
表1:健康管理SaaS比較表(総合評価)
| サービス名 | コスパ(💰) | 実用性(🔧) | 家族対応(👨👩👧👦) | 総合評価 | おすすめ対象 |
|---|---|---|---|---|---|
| Carely | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 一人情シスでも回る運用重視の企業 |
| HealthCore | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | 最低限の機能で始めたい小規模企業 |
| HiTTO連携 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | チャットボット連携で定着率を上げたい企業 |
| newbie | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | 産業医連携・メンタルヘルス重視の企業 |
| WELSA | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 健康経営優良法人認定を目指す企業 |
表2:用途別おすすめ表
| 用途 | おすすめSaaS | 選定理由 |
|---|---|---|
| 一人情シスで運用工数を最小化したい | Carely | 自動化機能が充実、問い合わせ対応を削減できる |
| 最低限の健康管理を低コストで始めたい | HealthCore | 月額200円〜、必要最小限の機能でスモールスタート可能 |
| 定着率を重視したい | HiTTO連携 | チャットボット経由のリマインドで利用率向上 |
| 産業医連携・メンタルケアを強化したい | newbie | 産業医とのオンライン面談機能が充実 |
| 健康経営優良法人認定を取得したい | WELSA | 認定申請に必要なデータ出力機能が標準装備 |
表3:価格帯別おすすめ表
| 価格帯(月額/人) | おすすめSaaS | 特徴 |
|---|---|---|
| 〜200円(竹) | HealthCore | 最低限機能、小規模企業向け |
| 250〜300円(梅) | Carely / WELSA | バランス型、中小企業のスタンダード |
| 400円〜(松) | newbie | 産業医連携・メンタルヘルス特化、手厚いサポート |
条件①:一人情シスでも回る運用工数か
最初に確認すべきは、月間の運用工数です。以下の表は、健康管理SaaSの運用で発生する主なタスクと、一人情シスが目指すべき工数目安です。
| タスク | 頻度 | 目標工数(月間) |
|---|---|---|
| 健診データ取り込み | 年1〜2回 | 2〜4時間/回 |
| ストレスチェック運用 | 年1回 | 8〜16時間/回 |
| 従業員からの問い合わせ対応 | 随時 | 4〜8時間/月 |
| 産業医連携・面談調整 | 月1〜2回 | 2〜4時間/月 |
| レポート作成・経営報告 | 月1回 | 2〜4時間/月 |
この表を見て「合計で月20時間以内に収まるか」をイメージしてください。もしそれ以上かかりそうなら、SaaS側の自動化機能が弱いか、そもそも一人で抱え込むべき業務ではない可能性があります。
条件②:セキュリティ要件を満たせるか
健康管理データは「要配慮個人情報」に該当します。漏洩すれば会社の信用問題に直結するため、セキュリティ要件は妥協できません。
最低限チェックすべきポイントは以下の3つです。
- データ保管場所:国内サーバーか、ISO27001等の認証を取得しているか
- アクセス権限管理:役職や部署ごとに閲覧範囲を制限できるか
- ログ管理:誰がいつどのデータにアクセスしたか追跡できるか
わたしの経験上、「セキュリティは大丈夫ですか?」と聞いて即答できないベンダーは避けたほうが無難です。回答に時間がかかる場合、社内でセキュリティ体制が整理されていない可能性があります。
条件③:現場が「使い続けられる」設計か
どれだけ高機能なSaaSを導入しても、従業員が使わなければ意味がありません。定着率を左右するのは「使いやすさ」と「習慣化のしくみ」です。
使いやすさのチェックポイントは、スマートフォン対応とシングルサインオン(SSO)対応の2点です。従業員がPCを持っていない職場では、スマホから健診結果を確認できることが必須になります。また、既存の社内システム(Google Workspace、Microsoft 365など)とSSO連携できれば、「また新しいパスワードを覚えるの?」という心理的ハードルを下げられます。
習慣化のしくみとしては、リマインド通知機能が重要です。ストレスチェックの締め切り前に自動で通知が届く、健診予約のリマインドがSlackに流れる、といった機能があると、情シスが個別に声かけする手間が大幅に減ります。
健康管理SaaS導入90日ロードマップ【タスク分解表付き】
一人情シスが健康管理SaaSを導入する際、最も重要なのは「全体像を見える化」することです。ここでは、90日間を3つのフェーズに分け、週単位でやるべきタスクを整理します。
フェーズ1(1〜30日目):要件整理と稟議準備
最初の30日間は「導入を決める」ためのフェーズです。焦ってSaaSを選定する前に、社内の要件を整理しましょう。
| 週 | タスク | 目標成果物 |
|---|---|---|
| 1週目 | 現状の健康管理フローを棚卸し | 業務フロー図(As-Is) |
| 2週目 | 経営層・総務へのヒアリング | 要件リスト(機能・予算・期限) |
| 3週目 | SaaS候補3〜5社のリストアップ | 比較表(機能・価格・サポート) |
| 4週目 | 稟議書ドラフト作成 | 稟議書(ROI試算付き) |
わたしがよく見かける失敗パターンは、「とりあえず無料トライアルを始めてしまう」ケースです。要件が固まっていない状態でトライアルを始めると、比較軸がブレて「どれも良さそうに見える」状態に陥ります。まずは1〜2週目の要件整理を丁寧に行ってください。
フェーズ2(31〜60日目):トライアル実施と社内説明
稟議が通ったら、次は実際にSaaSを触るフェーズです。
| 週 | タスク | 目標成果物 |
|---|---|---|
| 5週目 | 候補2〜3社でトライアル開始 | トライアル評価シート |
| 6週目 | 部門代表者への説明会実施 | 説明会資料・FAQ集 |
| 7週目 | トライアル評価と最終選定 | 選定理由書 |
| 8週目 | 契約手続き・初期設定開始 | 契約書・初期設定完了 |
トライアル期間中に必ずやってほしいのは、「自分以外の人に触ってもらう」ことです。情シス担当者は操作に慣れているため、使いやすさの評価がどうしても甘くなりがちです。ITが苦手な総務担当者や、現場の従業員に5分だけ触ってもらい、感想を聞いてください。
フェーズ3(61〜90日目):本導入と定着設計
最後の30日間は、導入を「定着」させるフェーズです。
| 週 | タスク | 目標成果物 |
|---|---|---|
| 9週目 | 全従業員向けアカウント発行 | アカウント一覧・初回ログイン案内 |
| 10週目 | 操作マニュアル配布・説明会 | マニュアル(PDF/動画) |
| 11週目 | 問い合わせ対応・FAQ更新 | FAQ集(更新版) |
| 12週目 | 利用状況レビュー・改善点洗い出し | 定着率レポート |
90日目の時点で「定着率レポート」を作成しておくと、経営層への報告にも使えますし、次年度の改善計画を立てる際の基礎資料になります。わたしは「導入したら終わり」ではなく、「90日後に振り返る」ことを習慣にするよう、いつもお伝えしています。
経営層を動かす稟議書テンプレ【ROI試算の見せ方】
健康管理SaaSの導入稟議は、「なぜお金をかけてまでやるのか」を経営層に納得してもらう必要があります。ここでは、わたしが実際に使ってきた稟議書の構成と、数字の見せ方をお伝えします。
稟議書に必ず入れるべき3つの数字
経営層が最も気にするのは「投資対効果」です。以下の3つの数字を必ず盛り込んでください。
①導入コスト(初期費用+月額費用×12ヶ月)
例えば従業員100名の会社で、月額300円/人のSaaSを導入する場合、年間コストは36万円です。初期設定費用が10万円かかるなら、初年度は46万円になります。
②削減できる工数(時間×人件費単価)
現状の健康管理業務にかかっている工数を洗い出し、SaaS導入後にどれだけ削減できるかを試算します。例えば、月20時間かかっている業務が月8時間になるなら、年間144時間の削減です。人件費単価を3,000円/時間とすれば、43.2万円相当の削減になります。
③リスク回避効果(法令違反・休職コスト)
健康診断の受診漏れやストレスチェックの未実施は、労働安全衛生法違反になります。また、メンタル不調による休職者が1名出ると、代替人員の確保や業務引き継ぎで100〜300万円のコストがかかると言われています。SaaS導入によってこれらのリスクを低減できることも、稟議書に記載する価値があります。
「帰宅が1時間早くなる」を経営語に翻訳する方法
わたしが稟議書で最も効果的だと感じたのは、「担当者の残業時間削減」を具体的に数字で示すことです。
例えば、「健康管理SaaS導入により、情シス担当者の月間残業時間が20時間削減される見込みです。これにより、担当者の帰宅時間が平均1時間早まり、本来業務(セキュリティ対策・システム運用)への集中度が向上します」と書くと、経営層も「単なるコスト」ではなく「生産性向上への投資」として捉えやすくなります。
わたし自身、2人の子どもがいる身として、帰宅時間が1時間早まることの価値は計り知れません。稟議書には書けませんが、「子どもの寝顔だけでなく、起きている顔も見られるようになる」というのは、担当者のモチベーションに直結する話です。
健康管理SaaSが定着しない原因と利用率向上策
せっかく導入したSaaSが「使われない」状態になってしまうのは、非常にもったいないことです。わたしがこれまで見てきた失敗事例を分析すると、定着しない原因は大きく3つに集約されました。
定着しない3大原因を実体験から分析
原因①:初回ログインのハードルが高い
「新しいシステムのアカウントが発行されました」というメールを見て、すぐにログインする人は少数派です。多くの従業員は「あとでやろう」と思い、そのまま忘れてしまいます。初回ログイン率が50%を下回ると、定着は絶望的です。
原因②:使うタイミングが分からない
健康管理SaaSは、毎日使うツールではありません。健診結果を見るのは年1〜2回、ストレスチェックも年1回です。「いつ使えばいいのか分からない」まま放置されてしまいます。
原因③:問い合わせ対応が追いつかず「面倒」の印象が定着
導入直後の問い合わせ対応が遅れると、従業員の中で「あのシステム、使いにくい」という印象が固定化します。一度ついたネガティブイメージを覆すのは非常に困難です。
チャットボット連携で利用率を3倍にした方法
わたしがおすすめする定着率向上策は、社内チャットボットとの連携です。具体的には、以下のような仕組みを作ります。
①健診リマインドの自動配信
健康診断の受診期限が近づいたら、Slack/TeamsなどにチャットボットがDMを送る。「健診の予約はお済みですか?予約はこちらから→(リンク)」という形式です。
②ストレスチェックの回答促進
ストレスチェックの締め切り3日前・前日・当日にリマインドを送る。未回答者にだけ送る設定にすれば、回答済みの人を煩わせることもありません。
③FAQ自動応答
「健診結果はどこから見る?」「ストレスチェックの回答方法は?」といったよくある質問には、チャットボットが自動で回答。情シス担当者への問い合わせを大幅に削減できます。
わたしが関わった企業では、チャットボット連携により、健康管理SaaSの月間アクティブ率が20%から60%に向上しました。情シス担当者の問い合わせ対応時間も、月12時間から月4時間に削減されています。
総務との分業モデルと外注判断基準
一人情シスが健康管理SaaSを「一人で抱え込む」のは、長期的に見て持続可能ではありません。総務部門との分業モデルを構築し、必要に応じて外注も検討することが重要です。
一人情シスが抱え込まない役割分担表
以下は、健康管理SaaS運用における役割分担の推奨モデルです。
| タスク | 情シス担当 | 総務担当 | 外注(オプション) |
|---|---|---|---|
| SaaS選定・契約 | ◎ 主担当 | ○ サポート | − |
| 初期設定・アカウント管理 | ◎ 主担当 | − | △ 可能 |
| 健診データ取り込み | ○ サポート | ◎ 主担当 | △ 可能 |
| ストレスチェック運用 | ○ サポート | ◎ 主担当 | △ 可能 |
| 産業医連携・面談調整 | − | ◎ 主担当 | − |
| 従業員からの問い合わせ対応 | ○ システム関連 | ◎ 内容関連 | − |
| 経営層への報告・レポート作成 | ○ サポート | ◎ 主担当 | − |
ポイントは、「システム関連は情シス」「業務内容関連は総務」という線引きです。例えば、「ログインできない」という問い合わせは情シス、「健診結果の見方が分からない」という問い合わせは総務、という形で分業します。
外注すべきライン・内製すべきラインの見極め方
外注を検討すべきタイミングは、以下の3つの条件のうち2つ以上が当てはまる場合です。
- 条件A:情シス担当者の月間残業時間が20時間を超えている
- 条件B:健康管理SaaS以外の本来業務(セキュリティ・システム運用)に支障が出ている
- 条件C:総務部門のリソースも逼迫しており、分業ができない
外注の選択肢としては、SaaSベンダーが提供する「導入支援サービス」や、健康管理業務のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスがあります。初期設定や健診データの取り込みだけをスポットで外注するのも有効な選択肢です。
わたし自身、外注の判断に悩んだときは「自分が倒れたら業務が止まるか」を基準にしています。もし止まるなら、それは一人で抱えすぎているサインです。
まとめ:健康管理SaaS導入は「家族時間への投資」
この記事では、一人情シスが中小企業で健康管理SaaSを導入する際のポイントを、90日ロードマップと稟議テンプレ、定着率向上策とともにお伝えしました。
記事の重要ポイント:
- 健康管理SaaS選定は「機能」より「運用工数」を最優先でチェック
- 導入前に3条件(工数・セキュリティ・定着設計)を満たすか確認
- 90日ロードマップで週単位のタスクを見える化し計画的に進行
- 稟議書には「コスト」「削減工数」「リスク回避」の3つの数字を必須記載
- 定着率向上にはチャットボット連携が効果的で利用率3倍も実現可能
- 総務との分業モデルを構築し一人で抱え込まない体制づくり
- 外注判断は「自分が倒れたら業務が止まるか」を基準に
- 残業月20時間削減で1日約1時間早く帰宅できる計算
- 健康管理SaaS導入は「家族時間への投資」と捉える
健康管理SaaSの導入は、単なるシステム導入ではありません。わたしは「家族時間への投資」だと捉えています。残業時間が月20時間減れば、1日あたり約1時間早く帰れます。その1時間で、子どもの宿題を見たり、家族で夕食を囲んだりできるのです。
一人情シスとして孤軍奮闘しているあなたが、この記事をきっかけに「無理なく回る」健康管理体制を構築できることを願っています。
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